会長挨拶

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平成29年、第106回日本病理学会学術総会の会長を務めさせていただく国立がん研究センターの落合淳志です。

病理学は、もともと病気の原因・発生機序を明らかにする学問であり、その疾患発症の原因は個人の有する遺伝子に基づくものから、職業・生活環境に至る社会のシステムにより引き起こされるものまで多様であり、それを探求することを目指したきわめて幅広い学問です。また、医学の発展は、基礎・臨床研究により明らかとなった原因とその病理形態像を基にした病理診断を基本とすることにより、現代の医学が確立されてきました。したがって、病理学は、疾患の原因を追究する基礎的研究と病理標本を基にした診断を行う診療の両者を両輪として医学における重要な役割を果たして来ています。日本病理学会は100年以上にわたり、我が国の病理学における基礎研究とともに適切な病理診断を行うように尽くしてきました。近年では、著しい分子生物学の発展とその技術開発さらには医学における診断・治療技術の進歩により新たに見出されてきた疾患概念を基にした病理診断法の開発など、医学及び医療の面において今後ますます病理学の発展が重要になってきます。

このような背景を鑑み、第106回日本病理学会総会のテーマを「進化する病理学-叡智の結集と革新の萌芽」とさせていただき、これまでの形態病理学に加え、次世代シークエンサーなど高感度・大量解析技術の革新を基にした遺伝子情報、遺伝子発現情報、蛋白そしてそれぞれのシグナル伝達などの分子情報と疾患の病態を統合的に評価し、各個人における病態として病理学的に俯瞰することにより、単なる形態診断を行うのではなく疾病の統合的理解に基づいた診断の確立を目指し、医学・社会に還元することを目指すことを目的としたいと思います。これは、病理学の持つ本来の医学への意義と考えられる、疾患の原因・病態の本質的理解と、その診断・治療そして社会への医療への還元を目的にしていると思います。 病理診断は悪性腫瘍を中心として、様々な疾患の治療決定に密接に関わってきました。近年では、薬剤の適応決定に直結するコンパニオン診断、臨床試験における病理試料を用いたバイオマーカーのスクリーニングや探索的研究、ヒト試料を用いた薬剤開発など、臨床~基礎のさまざまな場面で、製薬・医療診断機器等の産業界と病理の連携が重要度を増しています。本学会では、産業界と病理の連携をより深める機会になればと考え、今回は国立がん研究センターならではの新しい試みとして、病理検体を用いた研究等に関しての企業と共同シンポジウムや各企業と病理医の顔合わせ会等も計画しております。本学会を、病理と産業間の連携を深め、新たな価値を創造する契機にしたいと願っております。

さて、第106回日本病理学会は東京新宿の京王プラザホテルで行います。 2020年の東京オリンピックに向けて東京も大きく変わりつつありますが、日本各地から東京の地に集まっていただき、新しい病理学の挑戦を感じ取っていただければ幸甚です。皆様方に学会を楽しんでいいただけるようスタッフ一同準備に励んでおります。どうぞお誘いあわせの上、第106回日本病理学会学術集会にご参集いただきますようお願い申し上げます。

第106回日本病理学会総会
会長   落合 淳志